2015年8月24日放送のきょうの健康、今回は1か月に1回のメディカルジャーナルです。
テーマは心臓ホルモンで肺がん転移を防ぐ。
教えてくれる先生は国立循環器病研究センターの野尻崇先生。
転移を制するものはがんを制す
野尻先生は循環器という事で肺がんの例に。
肺がんはご存知の方も多いですが、肺の中にできるがん。
それがひどくなると、脳や肝臓、骨に転移をします。
このがんというのは、初めにできた所にとどまるだけなら
命を脅かすものではないのですが、これが
各部位に転移をすることで、命を落とすリスクが高まってくる
という風に考えられています。
今回肺がんに対して注目された心臓ホルモンのひとつ
「心房性のトリウム利尿ペプチド(ANP)」という物質。
尿を出したり、血圧を出したりすることが出来るホルモン。
20年前から広く使われているようです。
どうして使おうと思ったのかというと、肺がんの手術を受けた
2割の方が不整脈になるので、予防のつもりで心臓ホルモンを
使っていたところ、非常にいい効果があったとのこと。
その後偶然にも肺がんの転移をする率が低いという事がわかりました。
心臓ホルモンを投与するのとしないのとではこれだけの違いが。
心臓ホルモンが転移を抑える、という数値の上がり方が全然違いますね。
10人のうち9人ですね。
心臓ホルモンはがん細胞に直接効いたという事なのか?
当初はそのように考えられていたようですが
心臓ホルモンは、実は血管に効いていたという事が
わかったようです。
どうして血管に効いて転移が抑えられるのか?
転移の条件がこちら、この2つの条件が大きいとのこと。
がん細胞が血液中に散らばるのは、手術中に肺を触るために
その時に血液にがん細胞がついたりするため。
もう少し詳しくすると、肺というのは肺胞がたくさん集まって
出来た内臓、この肺胞には細い血管がたくさん
くっついています、血管が多い分血液の循環も活発なので
全身にがん細胞が含まれた血液がめぐっていくという事。
通常なら、血液中にがん細胞が散っていっても白血球や
マクロファージががん細胞を消滅してくれるのですが
もう一つの転移の条件、炎症が起こった状態だと
転移しやすくなってしまうと。
炎症が起こると炎症物質が発生し、血管の中にEセレクチンという
接着分子がたくさん出てきて、そこにがん細胞が流れてくると
Eセレクチンにがん細胞がくっつきやすくなり、そこから転移をしてしまう
という事だそうです。
心臓ホルモンは抗がん剤とはまた違い、抗がん剤はがん細胞を
小さくするのですが、心臓ホルモンはというと
血管の中にできるEセレクチンを除去する役割があるんです。
これらのことをJUNP STUDY(多施設臨床研究)といいますが
対象の患者さんは、非小細胞がんである事
(ステージⅣ以外で手術をする人)
肺がんの種類は、小細胞がんが20%、非小細胞がんが80%だそうです。
小細胞がんは対象外となっています。
他にもこのような感じで臨床研究をするそうです。
今後研究を重ねて、治療の精度を上げていくという事ですね。
副作用は、血圧が下がる位でこれは薬の量を多くすると
血圧が下がるようで、今回の期間の研究では薬の量は少なめに
つかっていくそうです。